にゃんこ心理士の社会の真理

にゃんこ心理士が社会の真理を綴ります。

負の連鎖 薬物依存が引き起こした悲劇

f:id:cat-psychologist:20201110193503j:plain

 さて、今日は私のなかで悔やんでいるケースをお伝えしながら、薬物依存の危険性を伝えていけたらと思います。

 

 このケースは選択を変えていたら、命だけは救えたかもしれないと悔いの残るケースの一つになります。

 

 あれは、ある日の救急当番日のことでした。

 救急隊から「オーバードーズ(過量服薬)」での診察の依頼がきました。

 

 胃洗浄の必要はなく、薬物依存の治療としての診察依頼でした。

 当然、私は診察依頼を受けます。

 

 救急当番日は人手が足りません。

 

 受診の依頼を受ける判断をするのは本来は先生かなと思うのですが、たまに受診拒否をしてしまう先生もいるので医療機関としての受診の可否をしていました。

 

 後は、先生の宿直室に電話をして、受診を拒否しないように誘導します。

 

 先生毎に性格等も違いますから、受診までのエピソードを考えていくわけです。

 

 幸い、私は専門医が「精神保健指定医」になるために「精神保健福祉士法」を教える立場(教えると言っても、ほぼゴーストライターですが(笑))でしたので、その辺は楽でした。

 

 時には○○先生の指定医の症例で必要なので、時には病床の稼働率が悪いので、などなど、断りそうな先生には理由を用意しておくのです。

 

 もう、政治ですよね(笑)

 当然、ちゃんとしている先生は救急当番の意義を理解していて、断りません。

 

 断わる先生が意義を理解してないとは言いませんが(; ・`д・´)

 でも、先生たちもあんまり無茶しちゃうと看護師さんに嫌われちゃうのです。

 

 医療機関では看護師さんなしでは回りませんので…。

 実際、採血とかも先生より上手な看護師さんもいる訳です。

 

 はい、話し逸れてしまいました。すみません( ;∀;)

 

 先生から受診の許可を貰うと、今度は受け入れ候補の病棟と調整をします。

 これも同様に断られる時があるんですね。

 

 例えば、内科的な身体合併症がある男性患者さんの入院調整を身体合併症病棟にすると、「それは、男子急性期病棟じゃない?」と言われたり、まあ、何かこちらも政治なんです(; ・`д・´)

 

 病棟の入院受け入れって大変なんです。

 特に精神科は…(/ω\)

 

 先ずは、病室の調整をします。男女混合病棟の場合は、異性同士が同室にならないように、最悪部屋替えが必要になります。これは性交渉のリスクをなくすためです。

 

 閉鎖病棟であれば、入院患者さん同士の病気特性や性格、相性などによって最悪、部屋替えが必要になります。例えば、薬物依存症の患者さんと統合失調症の患者さんを一緒にすると薬物依存症の患者さんが統合失調症の患者さんをイジメたりからかったりするケースがあるからです。

 ↑全てのケースではなく、個人の生活・成育歴や病気の特性から引き起こされます。

 

 部屋替えは結構、大変なんです(´Д⊂ヽ

 理由は長期の入院患者さんが多く、荷物が多いから…です。

 

 入院する患者さんの病状によっては薬剤の準備も必要になります。

 

 病室が決まって、患者さんを受け入れると、先ずは荷物検査です。

 精神科は荷物検査があるんです...当時はですが。今もでしょうか?

 

 検査の後は荷物をチェックした後、閉鎖病棟内に持ち込んでいいものと悪いものを仕分けします。

 

 そして、病室に持ち込めないものは病棟預かり品として全て書き出し、患者さんに確認のサインを貰います。

 

 同時に、入院の説明を簡易的(夜間が多いので詳細は翌日にする)にします。

 その後、病室に案内(救急当番日は隔離室も多かったですが)し、入院対応が終了となるわけです。 

 

 こうやって、改めて書き出してみるとかなり大変ですね( ;∀;)

 多分、他にも私の見えていない業務があったと思うので、本当に大変だったと思います。

 

 当時、お世話になった看護師さん達、本当にありがとうございました。

 そして、当時、仕事を増やしてしまってごめんなさい。

 

 どうして無茶な受け入れをするかと言うと、色々な理由はあったんですが、

1.精神保健指定医の症例が特殊なケースがある

2.身体合併症の受け入れ先病院の開拓と連携強化

3.病院経営のため

 が、理由です。

 

 病棟調整を終えると、今度は医事課に行ってカルテを作成します。

 

 カルテの作成を終えると、電気を付けたり、診察室の準備をしたり、救急搬送口の鍵を開けたり...。

 

 あー、何だか懐かしいですね(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

 

 と言う、受け入れの準備をするわけです。

 

 救急車の音が鳴ると、先生の宿直室に電話して、受け入れ病棟に電話をして、救急搬送口に向かいます。

 

 救急隊と患者さん(ストレッチャーが多かったですが)を診察室に誘導し、いよいよ診察が始まります。

 

 えー…、初めての救急当番日の記事を書くので大分、前置きが長くなってしまいました。大変申し訳ございませんでした。

 

 ここまで書いて、大分疲れました(笑)

 続きは後編で…って言ったら怒られますかね(; ・`д・´)

 

 運ばれてきたのは20代の男性

 風俗店で向精神薬とアルコールを接種し泡を吹いて119番通報

 

 と言うケース。

 

 受診時の患者さんの状態は安定しており、私の受けた印象は「好青年」容姿もよく、先生の問診も丁寧に回答している…そんな青年でした。

 

 実は、歳はあまり離れていませんでしたが(/ω\)

 

 彼は閉鎖病棟である男子急性期病棟に入院となります。自傷・他害の恐れがないとして保護室適応ではないと判断されました。

 

 患者さんの診察が終わった後、その家族が来院します。

 安否の確認や入院手続きのためです。彼の場合は妹さんでした。

 

 私が勤務していた精神科の場合、保険情報をもらい、入院の説明をして、アセスメントを実施します。

 

 この、アセスメントは本当に時間が掛かります4時間とか超える時もあります。

 

 アセスメントとは簡単に言えば、患者さんの情報を収集し、医療者側の主観、患者さんの主観、患者さん関係者の主観を含めて、客観的妥当性のある現在の状態を把握することです。

 

 救急当番病院の日に3人以上の患者さんが受診すると、対応は翌日に回ることが多かったです。

 

 ここからは、一気にいきます。

 

 「オーバードーズ」で来院した患者さんの妹さんにアセスメントした結果、エコマップ(要援助者を取り巻く環境を可視化したもの)上、三人兄弟で、長女にオーバードーズでの死亡履歴があることが分かりました。

 

 長女が「オーバードーズ」で亡くなっているのを聞いて、危険だなと思いました。

 

 そこで、切り込みました。「どうして、オーバードーズで亡くなったんですか?」と

 

 色々と経緯はありますが、要点は以下です。

 

 ・生活保護を受給していて、母親が薬物依存。
 ・大量の向精神病薬を子ども達に受診させて処方して貰っていた。
 ・その薬が家に溢れている。

 ・それを大量服薬して自殺を図った

 

 と言うような状況でした。

 

 アセスメント中、突然、「薬飲んでいいですか?不安で…」

 との発言があったため、「どうぞ飲んで下さい」

 と対応しました。

 

 なんの薬か尋ねると「デパス」と言う精神依存の強い、ベンゾジアゼピン系の精神安定剤でした。

 

 この時点で、不安がよぎります。

 そうです、薬物に対する認知の歪みから、家族全員が薬物依存になっていたのです。

 

 他に何か困っていることはないか尋ねると

 「家を出たいんです。夢があって、ファッション関係の学校に行って仕事がしたいんです」

 とのことでした。

 

 私は主治医と相談して妹さんの生活支援に介入することになります。

 

 理由は妹さんも精神科に通院しており、今回の件で転院してきたことで患者として支援対象になっていること(家族支援をすることもあります)、妹さんの(お兄さんもですが)薬物依存が生活環境に起因する可能性が高く、影響が大きいと考えられたため。

 

 そして、お母さんと何度か面談をして、服薬するなら自身で通院すること、医師の処方通りに服薬すること等を伝え、通院の支援制度等の手配をしました。

 

 最後に、娘さんの気持ちを伝えて、世帯分離(母と妹さんの住居をわける)を勧めます。

 

 機会があれば生活保護のことも詳しく伝えていけたらと思いますが、本ケースでは不正受給となっていました。

 

 簡潔に言えば、世帯単位で支給された保護費を母が一人で使っていたため、妹さんが風俗店(キャバクラ)で働いており、収入申告をしていませんでした。

 

 その後、生活保護係と相談し妹さんの新しい住居の確保と生活保護受給の手配をして世帯分離を実施しました。

 

 これらの調整で1ヶ月程度を要しました。

 

 しかし、この間、毎日のように患者さん(お兄さん)の見舞いに訪れ、主治医や私に頻繁に面談を申し込んできました。

 

 患者さんになっていたので当然、面談を実施します。患者さん(お兄さん)の相談や転居に伴う相談、医療・福祉制度の相談もありますので、当然多くの時間を消費しました。

 

 次第に自分(妹さん)の生活上のこと、進路や夢の話など精神科医療と関係のないことまで話題が及んでしまいます。

 

 すこし、マズイなとも思いましたが、邪険にすることもできず、主治医と相談し継続的に面談を実施しました。

 

 とは言え、私にも他に業務がありましたし、なるべく業務に支障のならない時間帯に面談時間が偏っていきます。

 

 そうです、病院が終わる間際の時間帯です。

 

 基本的に、病院の終了間際に入院依頼がなければ、救急当番日以外は比較的定時に終わることが多かったので、私の業務的には支障はありませんでした。

 

 しかし、それも良くありませんでした。

 

 結果的に面談を切り上げる口実を作れなくなってしまったのです。

 

 時には、とりとめのない話を3時間ほど聞いていたりと、面談時間がどんどん伸びていきます。

 

 主治医とも転居が終われば、新しい環境になり、来院頻度も減るだろうと楽観的に考えてました。

 

 しかし、転居後も回数や時間は減らず、面談ができるまで、外来受付で待っているというような状況になってしまいました。

 

 そして、とうとう事態が動き出します。

 

 患者さん(お兄さん)が入院している男子急性期病棟に行くと病棟主任の看護師さんに呼ばれます。

 

 内容は病院内で私と妹さんがデキているんじゃないかと噂があるから気を付けなさいよ…と。

 

 なるほど、客観的にみたら、そう見えるのかっと、正直、私は焦りました。

 

 患者さん(妹さん)とその様な関係になるのは職業倫理上、当然してはいけないことですし、してなくても、その様に見えてしまうのは仕事がしにくくなるなと。

 

 そこで、主治医に相談をします。

 結果、主治医、私、妹さんの3人で面談を実施しました。内容は面談回数と時間に制限を設けることでした。

 

 妹さんは内容を了承し、面談は特に問題なく終了します。

 

 その後、数回面談を実施してから、何故かぱったりと来院しなくなりました。

 

 自分(妹さん)の通院も

 患者さん(お兄さん)の面会も

 主治医や私への面談も

 

 まったく来なくなってしまいました。

 

 主治医や看護師さんは「そのうち、ひょっこり来るよ」「彼氏でもできたのかもね」「働きだしたのかな」なんて話していました。

 

 そして、事態は大きく急変します。

 

 妹さんの入居している不動産会社から突然、連絡があります。

 ↑生活保護の家賃上限の物件は少なく、住居を探すときに親切な不動産会社を使います。この時も私が不動産会社を紹介して、病院まで迎えにきてもらったりしていました。

 

 「この前、紹介した物件の不動産管理会社から、近所で異臭の苦情が来ている」

 

 悪い予感がしました。

 

 直ぐに、生活保護係に連絡をして家庭訪問をしてもらう手配を整えました。

 

 結果、妹さんはお亡くなりになっていました。

 

 死後、日数が経過しており、遺体の損傷が激しく、周辺には向精神病薬の薬袋が散乱していたことから、警察は薬物の過量服薬による事故死と断定しました。

 

 何とも言えない無力感に襲われました。

 

 その後、不動産会社の人が私を訪ねてきます。

 

 そして、「主治医と私宛の手紙」「私宛の手紙」を渡されました。

 

 内容は、「面談が出来なくなって寂しいけど、前向きにいきていく、ありがとう」と言う内容でした。

 

 この時、私の支援内容は正しかったでしょうか。

 いえ、色々な意味で違う選択肢があったのではないかと思います。

 

 この話には続きがあります。

 

 そうです。入院している患者さん(お兄さん)に伝えなければいけません。

 

 主治医と私と病棟主任さんで患者さんに妹さんが亡くなったことを伝えます。

 想像していたより冷静に受け止めていました。

 

 そして、それから程なくして退院となります。妹さんの死後も希死念慮や自殺企図も認められず、落ち着いて入院生活を送っていました。

 

 患者さんが退院して数週間が経ちました。

 

 ある日、出勤すると病棟主任さんに呼ばれました。

 

 そこには主治医もいました。

 

 そして、主治医から患者さん(お兄さん)がお亡くなりになったことを伝えられました。

 

 昨夜、自宅で向精神病薬と一緒にお酒を飲み、心不全で亡くなったとのことでした。

 死後、警察から病院に受診履歴の問い合わせがあり、発覚しました。

 

 これで、兄弟3人全員が薬物にまつわる出来事で最悪の結末を迎えることになりました。

 

 どれも本当に防ぐことができなかったか。

 

 今でも後悔と自責の念に捉われ続けています。